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タイから東南アジアの不動産を変える。上場後7社目のM&Aで描く、海外ビジネスの展望

GAテクノロジーズ樋口 ×DLホールディングス安藤
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CEO INTERVIEW

Nov

18

Thu

WORDS BY浅野 翠
POSTED2021/11/18
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GAテクノロジーズは2021年11月18日、DLホールディングス株式会社のタイにおける外国人向け不動産賃貸仲介事業「ディアライフ」および付帯事業の取得を発表しました。

累計利用者数1万2000人と、タイの日本人向け賃貸仲介においてトップシェアを誇るディアライフ。GAテクノロジーズグループにおいては、神居秒算に続く第2の海外事業です。

今回のGA MAG.では、CCO川村がモデレーターとなり、DLホールディングス代表・安藤氏とGAテクノロジーズ代表・樋口のオンライン対談を実施。今回の決定に至った経緯や、2人が描くビジネスの展望について語ります。

モデレーター:川村 佳央(執行役員CCO)
編集・執筆:浅野 翠(GA MAG.編集長)
撮影:松井 和幸(株式会社GA technologies)

PROFILE
  • DLホールディングス株式会社 代表取締役
安藤 功一郎
1981年生まれ。大学卒業後、中古車販売・買取のガリバーインターナショナル(現IDOM)に入社。2年で東証一部上場企業の当時最年少部長に昇進。退職後、2005年にタイへ渡り、旅行会社などを経営。2012年に日本人駐在員向けに賃貸物件の仲介を行うDLホールディングス株式会社を設立。12,000世帯以上の仲介実績を誇る。
  • 株式会社GA technologies 代表取締役社長執行役員 CEO
樋口 龍
1982年生まれ。幼い頃より世界的なサッカー選手を目指し、ジェフユナイテッド市原(現J2)に育成選手として所属。24歳でサッカー選手の夢を諦め、不動産会社へ就職。2013年に株式会社GA technologiesを設立。以来、代表として不動産ビジネスのDX推進に取り組む。2018年7月、東京証券取引所マザーズに上場。

急成長するタイで、AIが代替できないビジネスを創る

- 安藤さんはタイにいらっしゃるので、本日はオンライン対談です。

樋口:
安藤さん、本日はよろしくお願いします。いきなりですが、目はどうされたんですか?

安藤:
よろしくお願いします。
DLホールディングスで「MIGAKU」というムエタイのフィットネスジムも経営しており、私自身ムエタイをするのですが、昨日の試合で負傷してしまいました。

樋口:
相変わらずバイタリティがすごいですね(笑)

- まず、安藤さんがタイで起業された経緯を教えてください。

安藤:
私のビジネスの出発点は日本です。新卒でガリバーインターナショナル(現IDOM)へ入社したのですが、実際に働き始めたのは内定者の時でした。卒論以外は終わっていて時間を持て余していましたし、何より早くビジネスの経験を積みたいと考えていました。そこで人事に「アルバイトとして働かせてほしい」とお願いしたところ、店舗を紹介していただけることに。内定者が働くのは私が初めてだったそうです。

最初は、買い取った中古車の洗車や清掃を担当していました。1日20台以上はこなしたでしょうか。次第にそれだけでは物足りなくなり、ある時店長に「商談させてほしい」と頼み込みました。もちろん不安がられましたが、絶対にできると押し切りました(笑)

そこで実際に中古車買取の商談に出させていただいたところ、1件目から成約。以降は正社員と同じように働かせていただき、アルバイト3ヶ月目で月間営業成績が全国1位になりました。

当時から「いつかは経営者になりたい」と考えており、入社後は経営を学べるフランチャイズのコンサルティングの配属を希望していました。しかし、なぜか新規事業開発を担当することに。わからないことだらけでしたが、やるしかないと覚悟を決め、日本国内の各拠点を移動しつつプロダクト開発とセールスを並行して進めました。最終的には、既存事業を含めた営業成績で全国1位になり、その成果が認められて当時東証一部上場企業で最年少の部長になったんです。

待遇も上がり、メディアでも取り上げていただき、順調な日々が続きました。最初はもちろん嬉しかったのですが、徐々に「これが自分の実力ではなく、単なる幸運だったらどうする?」と不安を感じるように。経営者になるという夢を持ち続けていたこともあり、失敗を経験するなら早いほうがいいと考えたんです。そこで、自分の評判や会社のネームバリューが影響しない海外で起業しようと決意し、会社を退職。40か国ほど見た中で、タイでの起業を決めました。それが2006年ですね。

- なぜタイを選んだのでしょうか?

安藤:
まず、比較的治安が良くビジネスインフラが整っていること、日本人が危険な目に遭いづらいことが最低条件でした。
また、タイはアメリカや日本を参考にビジネスを進めやすい環境でもあります。先進国の事例を参考に、タイに合わせたビジネスを展開できれば勝てる可能性が高いと考えました。

最も魅力的だったのは、今後も人口増加が見込まれること。バンコクから飛行機で2時間の範囲に、6億5千万人が住んでいると言われています。日本だと、東京から札幌・沖縄くらいの範囲ですね。日本の人口は減少傾向ですが、バンコクの場合は7億人に増えると言われています。マーケットが今後大きくなるという土壌の良さが最大の決め手でした。

- 安藤さんはタイでDLホールディングスを設立し、外国人駐在員向け不動産賃貸仲介事業「Dear life(ディアライフ)」を運営されています。サービス開始の経緯を教えてください。

安藤:
2006年にタイで初めて起業してからDLホールディングスを創業するまで、複数の会社を興しました。また最初から不動産をやっていたわけではなく、最初の10年間は旅行サービスを運営していたんです。

もともとはタイへ観光に来る日本人に向けて、ぼったくりの心配がない観光スポットや飲食店を紹介していました。2000年代はインターネットも普及しておらず、海外で日本と同じサービスが受けられることに大きなメリットがあったんです。

しかし徐々にスマートフォンが普及し、ネット上で宿泊予約が完結したり、口コミを調べられるようになりました。
私自身もオンラインの便利さを実感するようになり、今後さらに人間の介在価値は下がっていくと考えたんです。そこで2012年に旅行会社を売却し、次にやるべきことを考えました。

安藤:
次の事業は、必ず人間が介在するビジネスモデルにしようと考えました。世界的にAI技術が急速に発達する今、人間が必要不可欠な分野でビジネスを伸ばさないと簡単に仕事を奪われてしまう。だからこそAIが苦手なお客様の心のケア、求められることの先読み、リアルな「物」が関わるサービスに注力すべきだと考えたんです。また、これまでタイで培った人脈やノウハウを生かせることも重要でした。

その点では、滞在期間が短い旅行と、滞在期間が長い不動産は私の中で地続きでした。また、旅行は短期間で非日常を味わうものなので、オンラインで決断できます。しかし、不動産は日常であり生活そのもの。だからこそ多くの方が内見を希望されます。
滞在中におこる不具合やトラブルを解決するのも、AIでは難しいですよね。つまり、人間の介在価値が非常に高い領域なんです。

不動産は未経験でしたが、旅行事業のノウハウが展開できると考えました。それがディアライフを始めたきっかけですね。

樋口:
住んだことのない国で1社起業するだけですごいのに、業種を変えて新たに起業するなんて、本物のシリアルアントレプレナーですね。

強い経営者と魅力的なサービスが決め手

- 独自の強みで業績を伸ばしていたディアライフですが、どのような経緯で今回のM&Aに至ったのでしょうか?

樋口:
私が安藤さんにお会いするために、タイに伺ったのがきっかけです。

初めてお会いしたのは、2019年2月ですね。GAテクノロジーズで海外事業部を立ち上げ、私が責任者として中国や東南アジアに提携先を探しに行きました。20社ほどリストアップし、最終的に7〜8社ほどお会いさせていただいた中に安藤さんがいらっしゃいました。

- 当時の印象はいかがでしたか?

樋口:
ゼロからタイでビジネスを成功させたという経歴と、拝見した写真から、すでにものすごいバイタリティを感じていました。正直なところ、お会いする前から他の方とは違うと思っていました。

樋口:
その後、直接お会いして、自分の予想が間違っていなかったと確信しました。お話する中で「この人と一緒にやるべきだ」と直感的に感じましたね。初対面で「M&Aさせてください」とまでは行きませんが、それに近いことはお伝えしていました。

安藤:
私は正直なところ、そこまで初対面で強烈な印象は受けませんでした(笑)
樋口さんからタイの市況感についてたくさん質問をいただいたので、それにお答えしていたら時間が来てしまった、という感じですね。

ただ、事前にGAテクノロジーズや樋口さんについて調べていたので、年齢も近い自分と樋口さんでは経営者として何が違うのかと考えていました。

- M&Aの話を聞いたときの印象はいかがでしたか?

安藤:
海外に事業展開したい会社は多いですし、私自身これまで複数回M&Aのお話をいただきました。ただ、どの会社もあくまで担当部署が業務として行っており、社長がプロジェクトに関わっていることはありません。

それがGAテクノロジーズは社長自ら連絡し、渡航してきた。その上「M&Aしたい」と率直に伝えてくれたんです。その直球なコミュニケーションに本気度を感じ、一度しっかり話を聞いてみようと思ったんです。

樋口:
安藤さんとは初めてお会いした時から一緒にビジネスをしたいと思っていました。しかし2020年、新型コロナウイルスの影響で海外渡航が困難に。私も「このタイミングで改めて現時点のビジネスモデルを研究しよう」と考えたんです。

しかし、今後の事業展開を考えるほどに「今このタイミングで東南アジアでビジネスを進めるべき」という結論に至りました。そのときに思い浮かぶのはもちろん安藤さんしかいません。

海外への事業展開は、日本以上に難しいと考えています。お互いの価値観はもちろん、意思疎通において心配があるとうまく行きません。安藤さんとは率直なお話ができると感じましたし、自分も安藤さんに対して正直であるべきだと感じました。だからこそ包み隠さずストレートにお話しました。

日本のテクノロジーを活用し、東南アジアに進出

- お互いの価値観と、東南アジア進出における本気度が同じだったからこそ実現したM&Aだったんですね。

樋口:
GAテクノロジーズグループの主力事業は、RENOSYマーケットプレイス事業およびイタンジ・DX事業です。これまでのM&Aは、イタンジを除いてRENOSYマーケットプレイス事業の伸長が目的でした。しかしディアライフは、RENOSYマーケットプレイス事業、イタンジ・DX事業の両方にシナジーがあります。

今後はタイを起点に、RENOSYマーケットプレイス事業およびイタンジ・DX事業を東南アジアに広げたいと考えています。ベトナムやインドネシアなどにも日本のノウハウを提供し、不動産のDX化を進めたいですね。

また2019年に神居秒算事業を取得し、中国にいながら日本の不動産を購入できるようになりました。今後はディアライフを通じて、日本や中国からタイの不動産が購入できるようになります。日本、タイ、中国の3カ国でクロスボーダーの不動産取引が可能になるのです。

安藤:
今、日本を始め世界の富裕層がシンガポールへ移住していますが、タイも国全体で外国人富裕層の受け入れ政策を進めています。不動産や金融商品など富裕層に向けたサービスは、今後さらに需要が増すと思いますね。

樋口:
また、ディアライフはリアルの不動産取引を行っているのが大きな強みです。タイにも物件を掲載したメディアはありますが、それだけで利益を出せている会社はなく、おとり物件の問題も解決できていません。
ディアライフは物件データを保有しているだけでなく、自分たちで不動産取引も行い、ビジネスとして成果が出ている。また不動産オーナーとも強力なつながりがあることで、イタンジのDX事業にも大きなメリットがあります。

今回ディアライフが加わったことで、これまでGAテクノロジーズグループが作ってきた点と点が線で繋がったと感じています。

- 最後に、今後の展望を教えてください。

安藤:
GAテクノロジーズに加わることで、挑戦できるステージが変わると感じています。東南アジアという急成長マーケットで、GAテクノロジーズグループが日本で培ったテクノロジーを活用すれば、これまでの何倍もの成長速度が可能になります。

これまで会社を成長させる上で大きなネックだったのは資金面です。タイで私のような外国人起業家が銀行から融資を受けるのは非常に難しく、資金調達はベンチャーキャピタルかIPOくらいしか選択肢がなかったんです。「お金があればもっと成長速度を上げられるのに」と、何度も悔しい思いをしてきました。

今後はそういう心配もなく、国全体の成長スピードを受けて思う存分サービスを拡大できます。タイだけでなく、早くベトナムやインドネシアにも進出したいですね。

逆に、人口も年収も減り規制も厳しくなる日本で会社を成長させ続けている樋口さんはすごいと思いますよ。これから一緒にビジネスを進めるのが楽しみです。

樋口:
ディアライフは、これまでGAテクノロジーズグループのビジネスに足りなかったピースです。今回の事業取得により、タイだけでなく日本や中国のお客様にもより良い選択肢が提供できるようになります。

この事業は、若くしてゼロからタイで会社を立ち上げ、日本と商習慣が違う環境でビジネスを切り拓いてきた安藤さんなしには成立しません。これから共に戦えるのが、とても心強いです。

※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。

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EDITOR’S PROFILE
  • Corporate PR
  • GA MAG.編集長
浅野 翠
2011年に早稲田大学を卒業後、インターネットイニシアティブ(IIJ)やビズリーチの人事を経て、2018年にGAテクノロジーズに入社。2020年8月より採用広報。好物はすっぱいお菓子。
Twitter:@midoriii1221
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