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「最先端の研究を社会に還元したい」事業会社へ転職した元理論研究者の働き方

AI Strategy Center 福中公輔
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中途採用 社員インタビュー PROFESSIONAL

Oct

1

Tue

WORDS BY増田 剛士
POSTED2019/10/01
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こんにちは! GA MAG.編集部の増田です。

GAテクノロジーズグループで活躍している社員の入社理由や働き方、仕事に込める想いなどをお届けしているインタビューシリーズ「PROFESSIONAL INTERVIEW」。

今回ご紹介するのは、AI Strategy Center(以下、AISC)に所属している福中公輔(ふくなか こうすけ)。理論研究者として統計学やデータ解析、テスト理論の研究に携わっていた福中が、なぜ事業会社への転職を選んだのか。その背景に込められた想いや、GAテクノロジーズで担当している仕事など、インタビューを通して様々なことを伺ってきました。

PROFILE
  • AI Strategy Center シニア・データサイエンティスト
福中 公輔(ふくなか こうすけ)
1980年生まれ。博士(文学)(早稲田大学)
早稲田大学にて、統計学やデータ解析、テスト理論の研究を行った後、実務への応用に興味を持ち、データサイエンティストとなる。学校法人産業能率大学総合研究所に在籍時は、企業内のデータサイエンティスト育成支援、データ解析支援、データ解析プロジェクトのコンサルティング等に従事。一般社団法人データサイエンティスト協会が主催するデータサイエンティストアワードにて、2017年度、東京メトロとのプロジェクト「データサイエンスと働き方改革」で最優秀賞を受賞。これまでにデータ活用による業務効率化の仕組みに関する特許を2件取得。

理論研究者から一転。最先端の研究成果を社会に還元するために、データサイエンティストの道へ

QUESTION.もともと理論研究者として働いていたと伺いましたが、これまでのキャリアを教えていただけますか?

福中:一番最初は早稲田大学の教員兼理論研究者として、統計学やデータ解析・テスト理論の3つの分野を専門に研究をしていました。
その中でも特に力を入れていたのは、ある統計学の手法(構造方程式モデリング)と機械学習の手法(グラフィカルモデリング)を数理的に融合する統計的機械学習の研究でした。

構造方程式モデリングは数理的に一般的な形式で表現されているために、様々な経緯で提案されてきた複数の統計モデルを、その下位モデルとして含むことが可能であるということはよく知られています。
一方、グラフィカルモデリングは構造方程式モデリングとは異なった経緯で提案・発展してきた変数間の因果関係をモデル化する機械学習の手法であり、変数間の仮説が少ない場合に有効な知見を与える探索的分析法として注目されています。

私の研究の目的は、このグラフィカルモデリングを構造方程式モデリングの枠組みに統合し、それをさらに発展させて、これまで構造方程式モデリングが不得意としていた探索的分析法に対して、構造方程式モデリングを利用した新しい方法論を提案することでした。

そういった研究をしている中で、ふと自分の研究を振り返る機会があったんです。その時から理論研究の意義について考え直すようになりました。

QUESTION.どのような気づきがあったのでしょうか?

福中:これまで自分が携わってきた理論研究の内容が、社会でほとんど使われていないという事実です。そもそも、現場で実務をやっている人たちが最先端の理論的な研究を必要としているかというと、必要としていないのが実情なんですよね。今でこそ、データサイエンティストやAIエンジニアを採用したり、自社でデータ解析の研究部門を持つ企業が増加していますが、当時はデータサイエンティストという言葉すらほとんど聞くことがなかった時代。
だからこそ、統計学やデータ解析などがこれから様々な企業に求められる時代が来るのではないかと思いましたし、最先端の研究が社会に還元されなければ研究している意味がないと考えるようになりました。

QUESTION.それが前職である産業能率大学総合研究所への転職へと繋がったんですね。

福中:そうですね。産業能率大学に転職した理由は、データ解析という観点から様々な企業の意思決定や、経営・事業の改善を支援することができると思ったからです。実際の業務内容としても、複数の企業を相手としたデータ解析系コンサルティングに携わっていました。

実務に携わるようになって気がついたことは、やはりデータ解析に対する企業の需要は多いということですね。「データを蓄積してはいるが、活用の仕方がわからない」という企業もあれば、そもそも「どうやってデータを集めていけばいいかわからない」という企業もあります。ただ、どの企業にも共通しているのは、データドリブンなアプローチをすることが有効な課題を抱えていること。理論研究者時代に「統計学やデータ解析などがこれから様々な企業に求められる時代が来る」という自分の考えは間違っていなかったと確信しました。

それから約8年ほど産業能率大学で働いていたのですが、次第に外部からの支援だと限界がある、という思いを抱くようになりました。企業との共同研究にも携わっていたのですが、研究成果を納品しても有効活用されないことが多かったんですよね。ヒアリングを重ねていく中で、有効活用されない要因は、「納品した成果物の有用性が理解されていない」、あるいは「担当チームが人事異動などでばらばらになり、その際に完全に引き継がれなかったから」だとわかりました。
現場の方々の理解もそうですが、何より肝心の意思決定層、経営層の方々が研究成果やデータドリブンなアプローチの有用性を完全には理解しきれていない。それが外部からの支援だけでは限界があると思い始めたきっかけでした。

QUESTION.それが転職を考え始めたきっかけにもなったのでしょうか?

福中:はい、これまではコンサルタントとして外部からの支援を主業務としていましたが、今度は事業会社など、内部からデータ活用をしていくことができる環境を求めて転職を意識し始めるようになりました。そんなタイミングで、データサイエンティスト協会やFacebookでつながりのあったAISCの橋本武彦さんに声をかけていただき、GAが主催しているGA tech Partyというイベントに参加。その場で代表の樋口さんともお話ししたのですが、その時の樋口さんの姿勢が凄く印象に残っています。コンサルティング業務で多くの経営者と接する機会がありましたが、ここまでテクノロジーやAIの活用について本気で考え、熱く語ることができる経営者がいるのかと思いました。
GAのような経営者・経営層の理解ある会社で、僕も一緒になってデータドリブンな事業展開をしていきたいと思い、最終的にGAへの入社を決めました。

QUESTION.それから実際に入社してみて、いかがでしょうか?

福中:社内の研究及び開発体制には、非常に驚かされました。AIなどを導入した企業の多くはデータは自社で持っているのですが、そのデータの分析や分析したデータに基づくシステム開発などは外注する企業がほとんどなんですよね。しかし、GAは全てが社内で完結しています。樋口さんが様々な発表の場で「一気通貫でサービスを提供する」という言葉を用いていますが、GAはサービスだけでなく社内のデータ解析における体制も一気通貫なんです。自社でデータを取得し、分析し、プロダクトに反映する。この一連の流れを社内だけで完結している会社はそうそう無いと思いますね。

AI Strategy Center / シニア・データサイエンティスト: 福中公輔

非専門家と専門家を繋ぐ架け橋となる

QUESTION.現在はどのような仕事をしていますか?

福中:価格推定エンジンの精度向上をミッションとして、RENOSY SELLというサービスで使用している実需物件の価格推定エンジンのバージョンアップと賃料推定のための新エンジンの開発を行なうチームを率いています。価格推定サービスを提供するにあたり、精度の向上はお客様の満足度やUXの向上に直結します。GAではより正確な情報をお客様にお届けすることができるように、独自の機械学習アルゴリズムを新規開発。その機械学習アルゴリズムに過去の中古マンション取引データを学習させることによって、高精度な価格の推定を可能としています。
2019年8月時点での数値ではありますが、精度はMER 5.35%(※1)。現段階でも非常に高い精度で推定価格を算出することができていますが、まだまだ改善の余地はあります。より正確な情報を瞬時にお客様に届けることができるように、そしてGAの営業の方々がより使いやすいツールをお届けできるように、今後も日々バージョンアップに臨む必要がありますね。

また、その他にもAISCの産学官連携チームに所属し、外部企業との共同開発・共同研究や、大学との共同研究などの可能性を模索しています。

(※1) MERとは、Median Error Rate(誤差率中央値)の略で、機械学習の分野において、世界的に用いられている推定結果の正確さを示す代表的な指標値であり、この値が小さいほど推定精度が高いことを意味します。

QUESTION.事業会社で働くデータサイエンティストに求められる役割や能力には、技術的なスキルの高さの他にどのようなものがあるのでしょうか?

データサイエンティストに限る話では無いですが、非専門家の方々とのコミュニケーションスキルと、現場のニーズを汲み取る力は必須ですね。

まず、「コミュニケーションスキル」について説明すると、要は出来る限り専門用語を使わずに自分たちがやっていることを説明することができるかどうか、というスキルです。AIエンジニアやデータサイエンティストがやっていることは、一般の方々からするとブラックボックスみたいなもので、細部まで理解している人は少ないと思っています。だからこそ、そういった非専門家の方々に、我々が取り組んでいることや、実現可能なこと・不可能なことを理解してもらうことが重要になります。

なぜ重要かというと、先ほどもお話しした通り、いかに素晴らしい成果を出したところで、その有用性が理解されないと、有効活用してもらえないまま廃れるという事態に陥りかねないからです。また、「何が実現可能か?」もある程度理解してもらわないと、理不尽と感じてしまうような要求がくることもあります。
データサイエンティストの視点で言うと、データを取得するための窓口となる方々には正しいデータの持ち方を知ってもらいたいですし、逆にこちらからはそのデータを元にどのような価値が提供できるかを伝えないといけません。その相互理解がないと余計なコミュニケーションコストが発生し、お互いに時間を浪費するだけ。だからこそ、非専門家とのコミュニケーションスキルは重要になります。

また、「ニーズを汲み取る力」は言葉通りの意味ですね。現場やお客様のニーズがないプロダクトを開発しても、使われないのは自明の理。そのプロダクトがどんなに素晴らしいものでも、この原理は変わらないと思っています。だからこそ、ヒアリングなどを重ねることによって現場の課題やお客様のニーズを汲み取る力が必要になります。また、そういった表面的な課題・ニーズだけでなく、潜在的なものがないかどうかまで考慮すべきだと思っています。

QUESTION.福中さんのキャリアとしてはGAが初めての事業会社となりますが、苦労していることや難しいと思うような部分はありますか?

GAで働いていて一番難しいと思うのは、開発のスピード感を保つことですね。前職時代は次の打ち合わせが2週間後というような案件が多かったのですが、GAではそんなスピード感は許されません。許されないというと大げさですが(笑)

会社全体を見ても、常にものすごいスピードで成長や変化が起こっているので、そのスピードについていく必要がありますし、あわよくば、追い越して自分自身が牽引していくくらいの気概が求められます。それはどんな職種であろうと変わりありません。
そんな環境下で働いているからこそ、求められている以上の成果を出すという意識だけではなく、いかに早く開発していくか。いかに早く成果を出せるか。という意識を常に持って働いています。

現役のデータサイエンティストとして第1線で活躍し続けながら、後進の育成も

QUESTION.福中さん自身が最新の技術や知識を得るために、意識的にやっていることはありますか?

外部に絶えず目を向けることを忘れないようにしています。
技術は日々進化していくので、様々な論文に目を通したり、学会に出席したりすることによって、まず自分自身が新しい技術や情報にキャッチアップできるようにしています。
そして、自分が得た知識や学びを部署内でも共有することも忘れません。AISCでは様々な形で定期的に情報共有の場を設けています。例えば、各々が担当している研究や開発タスクで、どのような理論・技術を採用して研究開発を進めているのか、という仕事に関する情報共有・議論をする場もあれば、順番に論文を読んでその内容を共有するという場もあります。技術顧問である東京大学の杉山先生を招き、月1回くらいのペースで勉強会の開催もしていますね。

そのように自分自身が意識的に取り組むのはもちろんのこと、部署としても様々な取り組みを実施することによって、より高度な研究開発とお客様への価値提供が出来るように努めています。

QUESTION.今後挑戦していきたいことを教えてください。

福中:色々とあり過ぎて困るので、「特にこれだ!」というものをあげると、後進の育成です。AISCが抱えている課題の一つに、新卒で入社した方々の教育が追いついていない、という課題があります。ありがたいことに2018年から2019年にかけて多くの新卒の方がAISCに来てくださったのですが、その反面、受け入れる側の教育体制が万全に整っていなかったのが原因ですね。

もともと大学教員をやっていたこともあり、後進の育成には大きな関心がありますし、新卒で入社してくれた人たちにはGAだけでなく、他のどんな会社に行っても活躍することができる人材になってほしい。そういう思いがあるので、まずはいち早くAISCの仕事にキャッチアップしてもらえるように全力でサポートしていきたいと思っています。

QUESTION.若いデータサイエンティスト・AIエンジニアの方々に大切にしてほしいことはありますか?

福中:現場感・ニーズを汲み取る力を大切にしてほしいですね。
いかに素晴らしい技術や理論、サービスであっても、そこにニーズがなければいずれ誰からも見向きされなくなります。大学の研究者や企業の研究部門を志している方々にはそこまで必要とされない能力かもしれませんが、少なくとも事業会社で働く上では重要な力ですし、身につけておいて損なことは何一つありません。

また、我々のような事業会社で働くデータサイエンティストにとっては、美しい理論や素晴らしい研究を完成させるのが最終到達地点ではありません。その先で成果をいかにして社会・現場・お客様などに還元することができるかを考え、形にすることが求められます。大学の研究であれば理論の追及で問題ありません。ただ、そうじゃない環境下にいるからこそ、理論や研究の先を見据えて思考し、行動し、成果を出す必要があります。そういった意識も大切にしてほしいですね。

EDITOR’S PROFILE
    増田 剛士
    2019年4月に新卒でGAテクノロジーズに入社。Communication Design Centerにて広報やイベントの運営、社内システムの運用などに携わっています。
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