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2020年度人工知能学会全国大会、登壇レポート

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AI Strategy Center

Jun

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WORDS BY堀 恵実
POSTED2020/06/23
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AI Strategy Center(AISC)の堀です。AISCでは、テクノロジーによる不動産流通サービスの発展のため、AI技術およびビックデータ解析といった先進技術を活用した事業貢献を目指して、日々研究開発を行っています。
研究活動の一環として、6/9~6/12に開催された2020年度 人工知能学会全国大会(第34回)に参加してきました!本来は熊本開催予定だったのですが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、初のオンラインでの開催となりました。

そこで、今回のGA MAG.では、人工知能学会で発表した内容や聴講した研究についてお送りします!

人工知能学会の雰囲気

“学会”と聞くと、なんだか学者が集まって難しい話をしている、と想像されるかもしれません。しかし、今年の人工知能学会のプログラムを見てみると、ガッツリ数式を扱う研究から、「人を”よみがえらせる”技術としてのAI創作物:AI美空ひばりとAI手塚治虫を例に」「人狼知能と不完全情報ゲーム」(人狼知能はゲームの人狼と人工知能をかけ合わせた造語)といったように、私たちの身近なテーマへ人工知能を応用した研究の発表も見られます。

オンライン開催の所感

オンライン開催の学会で研究発表・聴講するのは初めてだったので、オンラインで良かった点・リアルの方が良かった点をざっとまとめてみます。

オンラインで良かった点

  • 発表者目線では、大勢の前に立つ必要が無いため緊張せずに話せる
  • 聴講者目線では、座席の位置の差が無いため発表が聞きやすい
  • セッションごとのslackチャンネルで発表前・発表後に意見交換できる

リアルの方が良かった点

  • 発表に対する反応が見える
  • 質疑応答の時間で、すぐに挙手者を見つけられる
  • 自分が着目していなかった研究発表にも目が留まり、意外な発見が得られる

初のオンライン開催のため、運営・発表者・聴講者の3者ともオンライン慣れできていない等の理由から、進行がスムーズにいかない場面も若干見られました。オンライン開催ならではの良い点もあるので、今後も上手くオンライン開催・リアル開催を使い分けて研究者の交流が活性化されると良いなと思います。

発表してきた研究内容について

ベイジアンネットワークにおけるデータ取得優先付けのためのノード信頼度の感度分析」という題目で発表してきました。
私は現在、物件の良さを表すスコアがどのような要因で説明できるかについての研究を行っています。

上の図のように、物件の良さは築年・広さ・所在階といった建物情報以外に、治安・防災・飲食店の充実度等の周辺環境も影響して決まります。しかし、これらのデータは項目が抜けている部分や、サンプル数の少なさによるデータの不確実性が含まれます。

そこで、グラフの各要素が信頼度と確率を持ち合わせたベイジアンネットワーク(※)を構築することで、このようなデータの不確実性を考慮したスコアが得られる方法を提案しています。
例えば天気予報の例で考えた場合、図のようにニュースAだけを見た場合と、ニュースA・B両方を見た場合とでは、予報の確率と信頼度は変わります。テレビの予報は晴れだったけどスマホのニュースは雨だったから今日の予報は信頼できないな、という経験はありませんか?このような確率と信頼度の考え方をベイジアンネットワークへ取り入れたものがこの研究です。この技術を物件の良さを表すスコアリングへ応用することで、例えば防災スコアは85点だけど、計算に使用した災害データは予測値のため防災スコアの信頼度は70%、というようにその町の土地勘が無い方でも町の詳細な状況がイメージできるようになります。

(※)因果関係をグラフ構造で表現するモデル

聴講してきた研究

冒頭に紹介したように、人工知能学会では、数学的な基礎研究から、「食とAI」「広告とAI」のように幅広い分野の応用研究の発表がされています。その中でも私たちGAで取り組んでいる「不動産とAI」の分野でも一般セッションで10件の研究が発表されていました。この記事では、私が聴講した研究の中で3つ紹介します。

ニューラルネットワークを利用した集合住宅の物件情報の名寄せ

アパートやマンションといった集合住宅の物件情報を扱う不動産業界では、同じ物件でも掲載されている広告毎に物件名が異なることがあります。その場合に同じ物件情報かどうかを判断するために行う作業が「名寄せ」と呼ばれるもので、不動産の場合には物件名の他に住所・階建て・築年月の情報を比較して同一物件かどうかを判断します。
不動産の物件名寄せでは、物件名の文字列同士の類似度と物件情報の類似度を統計的に考慮したルールベースの手法が一般的です。こちらの研究では、ニューラルネットワーク(※)を活用することで精度が上がったことを示しています。入力に数パターンの物件名の比較類似度と、各種補助名称の検出パターンを追加している点が面白いなと思いました。

(※): 近年のAIブームの基本となった技術で、人間の脳の仕組みを簡略化したモデル。

不動産間取り図を対象にした物件魅力度データセットの構築と分析

顧客属性とその思考との間にどのような傾向がみられるか、不動産の間取りの評価から解析したという面白い研究です。クラウドソーシングで不動産の間取り画像の印象や機能性に関する項目(今風か、プライバシーは高いか、等)に基づく魅力度データセットを作成しています。分析からは、顧客属性に応じて間取りに対する嗜好に顕著な差異があることが示されていました。また、間取りの魅力度の項目別結果と、各部屋の繋がり方を反映したグラフ構造との間に特定の傾向が見られる事もわかってきているそうです。

不動産に関する地理空間情報と建物画像を用いた建物の構造・築年代推定手法の検討

①物件の外観画像データを用いたCNN(※)モデル と ②物件のポイントデータ+用途地域や道路等のGIS(地理空間情報)データを用いたSparse Modeling(SpM) (※)の2つのモデルを作成し、推定精度を比較した研究です。検証では、②ポイントデータモデルの方が判別精度が高い結果が得られてましたが、一般的にはポイントデータで用いる機能属性を集めることが困難なため、広域でのデータ整備には画像データの方が適していることが述べられています。また①画像データでは車の映り込みや天候、外観の塗装によって精度が悪くなる点が難しそうです。この結果から、画像と属性データを統合したマルチモーダル推論の構築を目指していくようです。

(※)CNN:Convolutional neural network(畳み込みニューラルネットワーク) 画像を扱う際に、最もよく用いられている深層学習モデルの1つ
(※)Sparse Modeling(SpM) :少ない情報から全体像を導き出すモデリング手法

最後に

自分の研究発表に対して質問・意見をいただいたり、他の不動産とAIに関する研究を聴講することで、非常に学びが多く、いい刺激になりました。今後も不動産業界を良くしていけるような研究に取り組み、また学会発表したいなと思います。

今回ご紹介したベイジアンネットワークを用いた研究以外にも、AISCでは画像処理・自然言語・データ分析等の領域での研究を行なっています。その中でも画像処理領域での研究について、AISCの河本が画像センシングシンポジウムで発表してきたので、次回はその様子についてGA MAG.にて発信します!

それではまた、GA MAG.でお会いしましょう!

EDITOR’S PROFILE
  • AISC
堀 恵実
2019年1月 GA technologiesに入社。AI Strategy Centerに所属し、現在は町の住みやすさに関する研究に携わっている。
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