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行動計量学会 第23回春の合宿セミナーの参加体験記

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不動産×AI

Apr

26

Mon

WORDS BY石田 康博
POSTED2021/04/26
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AI Strategy Centerの石田です。前回「Open Street Mapを活用した交通機関に関する騒音リスクマップの開発 日本行動計量学会 第48回大会」という記事で、発表した研究内容や事業会社で研究することのやりがいについて、お伝えさせていただきました。

今回は、行動計量学会主催の「人の行動を捉える! - 現代時系列分析入門 - 」というセミナーに参加しました。
このような学会主催のセミナーへ参加することや時系列分析の知識を体系的に得ることが初めての経験だったので、当記事では参加体験記としてセミナーの概要や題材になった手法の紹介・所感をみなさんにぜひとも共有させていただければと思います。

セミナーの概要

このセミナーでは、心理学分野において有用なツールとなってきた時系列データを用いて、人間の心理や行動のメカニズムを明らかにするための時系列分析の手法を体系的に学ぶことが主眼に置かれていました。

時系列分析と聞くと計量経済学の株価や経済動向の分析などをイメージしますが、昨今の情報技術の普及により、スマートフォンの位置情報のような行動計量データが急激に増えていっていることで、心理学や行動計量の分野にも使用できるようになってきているようです。

今回のセミナーでは2日間に渡りオンライン形式で行われ、講義と演習で構成された実践型のコースになっていました。基本から応用までの手法を体系的に学ぶだけではなく、その手法をプログラムで動かしながら理解することができるので、実用性の高いセミナーだと感じました。

時系列分析とは?

そもそも、今回対象にされた時系列分析とはどのような手法なのでしょうか?簡単に紹介させていただきます。

時系列分析とは、例えば株価のような観測された現象の時間的な変動を分析することで、時系列データの特徴を記述したり、時系列データからモデルを作り背後のメカニズムを説明したり、現在までに得られたデータを基にして将来の予測を行なったりすることです。今回のセミナーに関しては、大量の特徴量を用いて予測することではなく、人間の心理や行動のメカニズムを説明するために記述と説明に重点を置いて分析の手法に関する解説がなされていました。

また時系列分析で扱われるデータは、時間的に変化した情報を持つデータであり、各時刻の観測された値は前の時点から影響を受けているものが多いので、それぞれの観測値は独立なデータではないという特徴を持っています。

このような時系列データは、時間経過において増加し続けるまたは、減少し続ける成分(トレンド成分)や季節ごとの周期性による成分(季節成分)・外部からの影響による成分など異なる成分で構成されています。そのため、分析目的を明確にした上で適切に取り除いたり、含めた上でモデル化したり等の操作が必要になります。

状態空間モデルについて

今回のセミナーで説明されていたモデルの中で、時系列モデルの汎用的なモデルとして状態空間モデルというものがあるので、紹介させていただきます。

状態空間モデルとは、以下2つのモデルによって時系列データのモデル化を行う手法になります(図1)。

  • 状態モデル
    • 観測することができない「状態」を定式化することができ、「状態」の前後の関係を表すことができる
  • 観測モデル
    • その時々の「状態」に対して観測誤差を加えて、観測値として関係を表すことができる
図1: 状態空間モデルの概念図

このモデルの強みは、一般的な時系列分析(e.g. ARやARIMA)と比較して以下のような点があげられます。

  • 観測できない「状態」を組み込むことができるので、心理変数を扱うような心理学や行動計量・ビジネスの分野においても馴染みやすい点
  • 状態モデルと観測モデルを用いてモデル化を行うので、複雑なモデルや柔軟なモデルを形成することが可能な点
  • 観測誤差と状態誤差に分けることにより、観測由来の誤差がどの程度あるのかも把握できる点

これらの強みは、例えば企業の売上を予測したい場合に役に立ちます。企業の売上は、営業力やマーケティング施策などによって変動することが考えられます。それらが売上に対してどのように影響を与えているのかを把握し、次のアクションプランを考えたいと思うのは、とても自然なことです。

しかし、一般的な時系列分析の場合は、過去の売上から将来の売上を予測するので、過去の売上が影響していることがわかっても、次のアクションに落とし込みづらいと思います。

一方、状態空間モデルでは、売上の背後に存在する営業力の変動やマーケティング施策などのメカニズムを「状態」として取り込むことで、柔軟に表現することができます。したがって、売上をいくつかの要因に分けて説明・解釈することが可能になるため、「次に何を行うのか」や「何を改善していくのか」といったビジネス施策が考えやすくなり、アクションプランに落とし込みやすい点で評価できます。

所感

今回のセミナーの所感は、以下の2つです。

1. 時系列分析に関する知見の獲得

時系列分析やデータに関しては、初学の状態で参加しましたが、体系的かつ手を動かすことでより実用的な知識を得ることができました。不動産領域でも時系列的な変動を持つデータは、マンションの需要供給やマンション購入の成約等いくつか存在するので、今後は積極的に活用していき、ビジネス貢献のできる研究をしていこうと思います。

また心理学や行動計量の分野においても、アンケートのような一時的なデータではなく、時系列なデータを使うことで、より人間の心理を理解する手助けができると思いました。

しかし、当然のことではありますが、過去の観測値や状態を回帰させているため、予測というタスクにおいては難しい分野であると感じました。また、状態空間モデルに関しては、柔軟なモデルが形成できる分、知見や仮説の構築・妥当性の検証は分析者に大きく依存してしまうので、難しい分析でもあります。

2. 意欲的なセミナーの雰囲気

今回のセミナーでは、土日開催ということでしたが約200名ほどの受講者が参加していたので、大変驚きました。休日にも関わらず意欲的な方が多くいることは、個人的にもたくさんの刺激を受けるので、良かったと思います。また各個人の疑問点をQ&Aに書き込むスタイルが採用されていましたが、担当教員だけではなく、受講者側が回答を書き込んだり、意見交換をしていたりする場面も見受けられた点はとてもいい雰囲気だったと思いました。

最後に

今回は行動計量学会の春の合宿セミナーの参加体験記を共有させていただきました。行動計量学会の合宿セミナーは毎年春と秋に開催しているので、興味のある方はぜひ参加してみてください。

AISCでは引き続きこういった情報を共有していきますので、また更新があった際は是非お立ち寄りください。ここまで読んでいただいて、ありがとうございました!!

※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。


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EDITOR’S PROFILE
  • AISC
石田 康博
GA technologiesに新卒で入社。大学院の専攻は消費者行動の購買意思決定プロセスで、機能的価値と象徴的価値に着目した使用状況が与える影響について研究。入社以降、交通機関を対象にした騒音に関するシミュレーション研究を行い、その後サーバサイドだけではなくフロントサイドも含めた営業支援ツールのプロトタイプ開発に従事。
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