
株主・投資家の皆さまへの
ご挨拶
代表取締役社長
執行役員 CEO
樋口 龍
株主の皆さまへ
平素より格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
おかげさまで、第10期も無事に終了いたしました。これもひとえに、株主の皆さまの多大なるご支援のおかげと、深く感謝申し上げます。
第10期(2022年10月期)を振り返って
当社におきましてこの第10期は、売上規模も連結で1,000億円を超える1,135億円と順調に成長することができた1年でありました。ITANDIのSaaS事業に関しましても売上収益が20億円を超えるまでに成長しました。また、期初計画の売上収益1,100億円、売上総利益132億円、営業利益5,700万円から、2度の上方修正をし、売上収益1,135億円、売上総利益165億円、営業利益10億円と全社一丸となり事業に取り組んだ結果、計画対比で大幅に目標を超えて達成することができました。
RENOSYマーケットプレイスの主な取り組み
RENOSYマーケットプレイスの主な取り組みとしまして、以下の3点に注力しました。
①商品ラインアップの拡充
②ネット完結の契約手続き
③売却(売り手)DXの推進
①の「商品ラインアップの拡充」につきましては、お客様のニーズを反映し「新築コンパクトマンション」「中古アパート」「新築アパート」「海外不動産」の4つのプロダクトを拡充いたしました。②の「ネット完結の契約手続き」につきましては、従前より買い手の不動産購入にかかる各種手続きのオンライン化を進め、2022年5月18日に施行された改正宅地建物取引業法により、物件の検索から不動産購入の契約まで全てのプロセスがRENOSYマーケットプレイス(オンライン)上で完結できるようになりました。③の「売却DXの推進」については、WEB上での集客や契約にかかわる部分のシステム化を進め、買い手と同様にオンライン上で取引が完結できるようになりました。今後は、「中古マンション投資における販売戸数および売上高3年連続No.1の実績(※1)」を生かし「不動産投資をするならRENOSY」をもう一歩進め「不動産投資物件を売却するならRENOSY」を実現させてまいります。
また、当社のビジネスモデルを最大限生かすためには顧客とのリレーションがとても重要です。自身が住むための物件を提供する事業者であれば顧客との接点は物件の決済、引き渡しで終了します。しかし、当社のビジネスモデルの最大の特徴は、物件の引き渡し終了時点で顧客との接点が終わるのではなく、そこから顧客との接点がスタートすることです。なぜならば、当社が扱っている商材が投資不動産だからです。投資の場合、購入後に物件をお預かりして管理(サブスクリプション)するため、顧客との接点が購入後も続きます。さらに自宅の購入と違い、投資の場合、顧客は1物件だけではく、複数物件購入するケースも多くあります。一般的な不動産売買のフローモデルではなく、初回購入時にCPO(※Cost Per Order=1件の受注獲得単価)を回収し、さらに管理(サブスクリプション)でストック収益を得て、リピート購入、他商材購入、購入物件の売却へと続く、顧客リレーションが基盤となるビジネスモデルです。初回購入で顧客接点は途切れず、その後もLTVの最大化を図ることが可能になります。約7,000人のオーナーとのリレーションを強化するために、OWNR by RENOSYというアプリを提供し、また、約32万人の会員を生かすためにWEB上でマイページ等のプロダクトも提供しています。投資という購入後の接点を持ち続けられるビジネスモデルの強みを生かし、今後もLTVを高められるプロダクトの強化、商品ラインアップの拡充を行っていきます。
RENOSYマーケットプレイスの10年後の未来
RENOSYマーケットプレイスが目指す、10年後の世界観。それは、グローバル展開も含めて、複雑な不動産売買の取引が、シームレスにワンクリックで出来るようになっていることです。その世界観を実現するためには、以下の4つの障壁があります。
①情報の不透明性
②取引が複雑
③商品が高額
④関連するプレーヤーが多岐に渡る
まず①について、RENOSYは創業から不動産売買にまつわる情報を透明性高くオープンにし、②の複雑な取引はワンストップで「ネット×リアル」を実現してきました。一方、③商品が高額、④関連するプレーヤーが多岐に渡ることに関しては、今後更なるイノベーションが必要になっていきます。そのため、来期は、③、④の障壁をクリアすべく、その土台を構築していきたいと考えています。
ここで1つ失敗事例を共有しておきたいと思います。2018年12月に公開の「株主の皆さまへの手紙」(https://ssl4.eir-parts.net/doc/3491/ir_material_for_fiscal_ym/57246/00.pdf)におきまして、家賃保証会社のM&Aをきっかけに今後の信用経済の基盤となるデータを獲得し、賃貸を入り口に自宅購入のクロスセルを行うと記載しておりましたが、戦略通りにはいかず失敗をしました。ただ、チャレンジには失敗がつきものですし、私は失敗を必要以上にネガティブに捉えていません。むしろ失敗を早く経験した方がよいと考えています。なぜなら、失敗は次に生まれてくる新規事業や既存事業にも生かせるからです。失敗から学び、失敗を糧に、複雑な不動産売買の取引がシームレスにワンクリックで出来る「RENOSYマーケットプレイス10年後の未来」を目指し、早期に社会のインフラ(基盤)となる規模まで拡大していきたいと考えています。
ITANDIの取り組み
当社の第二事業であるITANDIにおきましても、賃貸のリーシングに係る手続きについて、内見予約、電子入居申込、電子契約、更新退去、内装工事とワンストップで完結できる世界観の実現に向けプロダクトラインアップを拡充しました。その結果、導入社数も2,000社を超え、電子入居申込数も年間約63万件と利用数で2年連続No.1を獲得(※2)し、着実に不動産賃貸領域のインフラになりつつあります。
ITANDIは、不動産業界という特定の業種で使われることを想定したバーティカルSaaSです。業種に関係なく、特定の業務に使われるホリゾンタルSaaSと違い、バーティカルSaaSはいかに深く業務に入り込むことができるかがポイントになります。日本におけるホリゾンタルSaaSの顧客は約367万社(※3)と言われております。一方、不動産会社数は約11万社(※4)になりますので、マーケットは小さく見えるかもしれません。しかし、その分、顧客の業務に深く入り込み、アップセル、クロスセルでプロダクトを導入していただくことにより、11万社の市場が2倍にも、3倍にも、4倍にもなっていきます。また、ホリゾンタルSaaSと違い、バーティカルSaaSは顧客を獲得するために大きくマーケティングコストをかける必要がありません。前述の通り、既存顧客にアップセル、クロスセルをしていくことでLTVを高めていけるからです。実際にITANDIでは約半数の顧客に3プロダクト以上を導入いただいています。
ITANDIの今後の戦略
今後の戦略の1つにSMB(※Small to Medium Business=中小企業)開拓があります。なぜならば不動産会社は約11万社のうち約95%が従業員10名以下(※4)と言われているからです。よって、今後マーケットシェアを高めていくためにはSMBの開拓が重要になります。
この度、所属会員約35,000社を抱える2大不動産協会の1つである全日本不動産協会(以下、全日)の会員向けインフラシステムにITANDIのシステムをご採用いただきました。既にITANDIの顧客である2,000社にプラスし、全日の会員約35,000社、特にSMBの企業の方々にITANDIを知っていただくことで、スムーズにサービス認知が広がっていくと考えています。そして、2022年9月にM&Aをした株式会社ダンゴネット(以下、ダンゴネット社)もSMB開拓にはかかせません。ダンゴネット社の基幹ソフトウェア(オンプレミス型)は累計5,500社へ導入実績があり、運用保守も約2,000社にのぼります。ダンゴネット社と一緒になることでSMB開拓が進むだけでなく、2023年春より提供する業務データベースとなる基幹システム「ITANDI管理クラウド」の導入促進に大きくプラスになると思っています。ITANDIにおいても、RENOSYマーケットプレイス同様にマーケットリーダーになるべく、シナジーがある企業のM&A、アライアンスは積極的に行っていきたいと考えています。
この賃貸・管理領域においては、システム会社が乱立し、システム会社同士がシステム連携をできておらず、約11万社の不動産会社の業務改善がスムーズに進んでいないという問題があります。私たちがマーケットリーダーになることで、中小企業の問題を解決し、消費者に対してなめらかな不動産取引を提供していきたいと考えています。
新しい領域へのチャレンジ
不動産領域は、大きく分けて次の5つ、①開発、②流通、③投資・運用、④管理、⑤賃貸があります。当社は不動産領域のうち③投資・運用(RENOSYマーケットプレイス)、④管理⑤賃貸(ITANDI)をターゲットにしております。今後は投資・運用、管理、賃貸の領域でマーケットリーダーを目指しつつ、不動産領域にこだわらず第3の領域にもチャレンジしていきたいと考えています。当社グループの参入条件は、マーケットが大きく、社会課題があり、レガシー産業にイノベーションを起こせることです。加えて、WEB3.0、NFT等のテクノロジーの進化も共に検証を重ねていきます。
企業成長は働く仲間たちの活躍があってこそ
当社は事業を推進し、日々改善を繰り返しながら成長していますが、それを可能にしているのが働く仲間たちです。社員も連結で1,000名近くとなり、M&Aをした企業も9社にのぼります。M&Aをした企業とは、文化も人事制度も異なります。また、毎年、新卒も数多く採用し、職種もセールスやエンジニア、データアナリスト、建築士等々、ネットとリアルが入り混じり多岐に渡ります。このような状況だからこそ、会社のルールは極端に少なくしています。しかし、1,000名規模となるとガバナンス観点でルールも非常に大事になってきます。いかに私たちの強みを生かし、スピード感を落とさず、ガバナンスを強化していけるか…。21世紀の新しい経営スタイルを試行錯誤しながら模索していきたいと考えています。
当社で活躍するメンバーの特徴は、①成長意欲が高い、②古い慣習を好まない、③個人よりもチームを重んじる、④業界・商材への拘りがない、の4つです。私が企業経営で大切にしていることは、会社のスピード感を落とさず、高みを目指すチャレンジを続け、会社のビジョンを常に明確にし、カルチャーを大事にするかです。今後も活躍しているメンバーがより一層長く働けるよう、彼らの特徴を踏まえた文化を醸成しながら、ストックオプションの付与や適切なポジションへの配置等、さらに成長・活躍できる制度や環境を整えていきたいと思っています。
最後に
長年変わってこなかった不動産業界が、2022年5月18日の改正宅地建物取引業法を契機に、いよいよ大きく変わっていきます。私たちはその準備を10年前から行ってきました。PropTech(不動産テック)のリーディングカンパニーとして、世の中を変え、顧客の利便性を追求し、社会のインフラとなることで、株主価値の最大化に繋げていきたいと考えています。
第11期である2023年10月期も変わらぬご支援のほどよろしくお願いいたします。
樋口 龍
2022年12月31日(※1)調査対象:国内の投資用マンション販売を行う上位5社/調査項目:各社の直近決算年度における投資用中古マンションの販売戸数と売上高/調査手法:デスクサーチならびに、関連企業等へのヒアリングベース調査/調査期間:各社の直近の決算年度/調査会社:株式会社東京商工リサーチ
(※2)調査対象期間2021年4月1日~2022年3月31日 TPCマーケティングリサーチ株式会社調べ
(※3)令和3年経済センサス‐活動調査 速報集計
(※4)一般財団法人 不動産適正取引推進機構 「令和 3 年度末 宅建業者と宅地建物取引士の統計について」
代表取締役社長執行役員 CEO
樋口 龍 (ひぐち りょう)
1982年東京生まれ。幼い頃より世界的なサッカー選手を目指し、ジェフユナイテッド市原(現J2)に育成選手として所属。24歳の時にサッカー選手としての夢を諦め、ビジネスマンへ転身し不動産会社へ勤務。”巨大なマーケットを形成しながらも極めてアナログな不動産業界にテクノロジーで革命を起こす”と志し、2013年に株式会社GAテクノロジーズを設立し、代表取締役に就任。創業時から中古不動産の流通事業を展開。現在はテクノロジーを活用したエンド・トゥー・エンドの不動産流通プラットフォームの構築を中心に、データドリブンでユーザー利便性の高い不動産取引を目指す。また社内業務においても、AI・RPAによる効率化やデータ活用による業務改善に積極的に取り組む。